2019-07-07

チームワークのカイゼン、その第一歩はチームを信頼することから始めた

何かがうまくいっていないシステム開発の現場で、タスク管理のやり方を変えたお話です。端的に言うとタスクボードをやめてカンバンを採用しました。さらに、カンバンを見ながら短く朝会をするようにしました。それからというもの、メンバーがそれぞれの担当範囲を俯瞰するようになったように感じます。このやり方をするにあたって諦めたこともあります。その一方で、メンバーを信頼すると決めることができました。これは自分にとってもよい実践であったように思います。

誰も理解していなかったスクラム

タスクボード

以前のタスク管理はなんちゃってスクラムでした。タスクボードを使い、スプリントらしきものを毎週やっていました。が、実は誰もスクラムを正しく理解していません。理解しないものを惰性で続けてしまっていたことは、今思えば怖いことです。

タスクボードのルールそのものはシンプルなものです。バックログに挙げられたタスクでメンバーの手はいつも埋まっていました。一見するとプロジェクトは前進しているようでもあります。

しかし、タスクを積み上げた先の状態を、誰も見ていなかったように思います。ストーリーと呼ばれるものはいかにも形式的で何の効果も与えませんでした。そこで、タスクボードとは別のところで先を見て新たなタスクを差し込もうにも、メンバーの手が空いていない。手前のタスクで手一杯、が割り込みを退けるための暗黙的な言い訳として利用されている。そう感じました。

優先度よりも容易度でタスクが挙げられてしまう。挙げられてそこに手をつけられてしまうと軌道修正が難しい。結果的に、楽に流れることを正当化するツールにしかなりませんでした。もちろんこれがスクラムによる管理構造の問題だけではないのは理解します。しかし現実にそうなりました。それっぽくやってみるではまったく駄目でした。

手元の作業と見えない状況

タスクボードではタスクを積み上げた先に達成しようとするテーマが消失します。テーマの進行が今どのような状況にあるか見えない訳です。状況が見えないので、テーマを達成するために優先する事項を読むことが難しくなります。

会議は、先週私はこのタスクをやっていました、という報告に終始しました。次のアクションにしても、今週私は引き続きこのタスクをやります、になってしまう。視点がマクロすぎて、全体として無駄なくやれているのかそうでないのかが見えづらいのです。このやり方がベースにあるので、チームワークの視座はすっかりそこになっていました。

そこで、リスクを解決するために課題管理簿を利用しようもとしました。が、管理が二重になるという理由から見向きをされませんでした。マクロな視点のツールが複数あると棲み分けが難しい。結局は、似て非なるものを設けずタスクボードに一本化しようとなってしまいました。

タスクではなくテーマに着目するカンバン

カンバン

今までのやり方はなかったことにして、エイヤでやり方を変えることにしました。タスクの積み重ねであるテーマをひとつ単位にして着目したい。テーマについて、リスクがある状態なのかどうか分かるようにしたいと考えました。

開発は機能追加をしていく段階にあるので、テーマを単位するのは直感的でした。テーマには主担当を設けるようにしました。複数人で携わる規模のテーマは、主担当をひとりにできる程度に分割します。

テーマを配置するカンバンは工程をザッと分類したものです。そのテーマをやるかやらないか、どこまでやるかを決める段階は「計画・調整」。そのテーマをどのように実装するかはっきるするまでの段階は「分析・検証」としました。「製造・検査」は「実装」と「テスト」のように細かく分けませんでした。大枠が決められた後のことはやってくれるだろうと、メンバーを信頼したからです。

実際、コードレビューの依頼も適宜してくれました。今ではメンバー間で相互にコードレビューをしてくれています。彼らの中で不安なことがあればレビュー依頼を挙げてくれる。それはエンジニアの領分なのだからお任せする、で結果的にはよかったのです。

今の状況を具体的に軌道修正する朝会

カンバンを利用することで、日や時間粒度のタスクは不明瞭になりました。不明瞭になった分は朝会で補うことにしました。

朝会では、議論のフォーカスをメンバーではなくテーマに当てます。テーマの状況は今どうか、つまり何が済まされているかを最初に述べてもらう。次に手詰まることがあるか、つまり難しいことや未解決のことがあるかを述べてもらう。最後に状況を次どこにもっていくか、つまり次何に着手するかを述べてもらう。手詰まることの理由が大きいものであれば、朝会とは別に会議を設けます。だいたいは朝会をいちど終えてから関係する人だけがその場に残って話し合います。

朝会の雰囲気ができるまではファシリテートして議論が発散しないようにしました。長引く話は切り上げて別途にするよう横槍を入れました。話を長引かせてしまうと議論のフォーカスがぼやけてしまうと考えたからです。やらないようにしたのは、時計回りで順番に報告させることです。テーマの主担当がひとりなので、実際にはひとりずつ報告することにはなるのですが。

昨日あなたが何をしたかを知りたいのではない。今テーマがどの状況にあるのかを知りたい。これが浸透するまでは横槍を入れてでも話の向きを整えました。今ではファシリテートしなくても議題をテーマにして回してもらえています。


プロジェクトの進行において、メンバーが忙しく手を動かせているからそれでよいということはありません。手を動かしていることがある着地点に向かわなければなりません。できることなら回り道だってしたくない。

メンバーは今、おのおの手を動かしていることが確認されたものかどうかを意識できています。テーマとして安定な状態か不安定な状態かを考えらています。テーマ単位の俯瞰をそれぞれのメンバーがするようになってきているように感じます。

私は今、テーマよりも小さい単位のタスクはメンバーが独自にやってくれればいよいと考えています。それはメンバーに任せられることで、やってくれるものと信頼しています。正しく言えば、チームを信頼することにしました。チームワークのカイゼンするために、まず自分のものの見方から変えることにしました。

ジャーニーはつづく

ふくちはるき
フリーランスのソフトウェアエンジニア
オブジェクト指向やドメイン駆動設計に興味があります。趣味で写真もやります。 もっと詳しく