2018-12-09

終身雇用から新しい雇用のかたちへ 『ALLIANCE』 感想

先日、Twitterのタイムラインでたまたたま見かけた本、『ALLIANCE』を読んでみました。会社と従業員の関係をどうしていくべきかについて書かれた本です。

私は今、採用や業務委託をするにあたっての面談をさせてもらっています。システム開発チームとして一緒に仕事をすることになるので、そのうちのひとりとして、エンジニア同士のお話をさせてもらうことになっています。

そこで考えることがあります。彼らの満足として、この会社で彼らはどれくらいの間何を満たせるだろうか。会社側の都合だけではなく、彼らの動機とミスマッチしないかというようなことです。

かく言う私もフリーランスで業務委託者という立場にあります。採用活動のコンサルティングをしているわけではありません。システム開発をする人間です。以前、正社員として勤めていた会社でも採用の面談をしていたことはありますが。

それで、フリーランスという立場だからこそ、会社側の都合だけではなくニュートラルに彼らの動機も考えられるのかなとは思います。どちらかというと彼らのことの方が人ごとではないかもしれません。

そういうこともあってタイムラインで偶然流れてきて知ることができた『ALLIANCE』に興味をもちました。

変わる、会社と従業員の関係

会社と従業員の関係を考えるとき、どうしても従業員は会社に対して下手になってしまうものだと思います。ろくな交渉もできず会社に使い倒されているような人を、近いところで見聞きしてきました。一方的なものです。

しかし時代は確かに変わってきているようにも思います。日本においても終身雇用は維持できなくなってきていますね。実際、退職金がない会社はもう珍しくありません。個人の就業寿命は会社の寿命よりも長くなっているとも言われています。

現に私はフリーランスになっています。仕事を選ぶことができる状況は確かにあります。まあ、かつてこんなことになるとはまったく予想していませんでしたが。結果的にワークシフトの一端に足を踏み込んでしまったような感じです。

今、とあるベンチャー企業で仕事をさせてもらっています。ので、ベンチャー企業が若手を抱えて教育する余裕がないのは分かります。しかし、そうはあっても、中途採用者や業務委託者をただ寄せ集めるだけで、進む方向を合わせていくことができるものだろうかとも考えてしまいます。

そんな中で会社と従業員の関係を、とりわけ従業員に対して会社がどうしていくべきか、『ALLIANCE』は次のように述べています。

「企業の目標と価値観」と「社員のキャリア目標と価値観」との間にある共通点を、マネージャーが意識的に探して明示しなければならない。

会社によっては、マネージャーは職位・タイトルであるかもしれません。が、マネージャーを考えるとき、役割をもつ機能であるとするべきだと思います。そうでなければ、年次に従って与えられる冠でしかなくなってしまいます。

その意味で、上記の手引きはマネージャーの役割を明確にしてくれます。また、これをやるために次のような心構えであるべきだとも述べられています。

会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させることはできない。ある期間、一定の条件のもとでのみ、自然な形で両者をそろえる「整合性」を目指そう。

それはそうかもしません。当たり前のことに気づかされました。何もかもひとつになることはできなくても、お互いを認めて、共通の利害を探し出そうとすることはできるはずですね。探し出せるかどうかは分かりませんが。

価値観や動機、感情や信念を明確にする

『ALLIACE』には、従業員(になる人)の価値観や動機をどのようにして明確にするかについても具体的に述べられています。

まず最初に、その人が尊敬する人物の名前を3人書き出してもらう。次に、それぞれの名前の横にその人物について尊敬できる点を3つ書き出してもらう(合計で9つ)。最後に、その9つを、大切に思う順に1番から9番ランクづけしてもらう。

仕事の中で自分がどうなりたいかをイメージするのはなかなか難しいものだと思います。ただ納期に追われ、手を抜くのとは違いますが、なんとなくこなしていってしまいます。そうしたらまた次の納期があるので、これを繰り返してしまうからです。

上記の方法は指向性やビジョンを尊敬する人物として、また具体的な能力やスキルを尊敬できる点として挙げられるよいフレームワークだと思いました。(個人的にやってみよう。)

採用の面談をさせてもらっていると先に書きました。数年前、正社員をしていた会社でも面談をしていましたが、未だに正解パターンをつかめていません。ぜんぜん試行錯誤しています。

何をどう見て聞いたらよいのか。それどころか、自分が人を選ぶなどというのはおこがましいのではないかとすら考えてしまいます。この点、若かった時の方が会社都合だけを考える図々しさがあった分楽だったかもしれません。

ここでやはりおこがましかったと気がつきます。スタンスがもうおかしかったですね。考えることは、一緒に仕事する関係を築くことができるかを共に擦り合わせることでした。そのためにはお互いに感情や信念を示し合わせる必要があります。

なお、その人の感情や信念を知るのにどのような聞き方をするのが効果的かも『ALLIANCE』には述べられています。

「今までで最高の同僚はどんな人でしたか?」とか「どんな瞬間に自分のキャリアを最も誇らしく思いますか?」といった率直な質問

『3分から5分で今までの人生をざっと語り、どのように今の自分になったのかを教えてください。その中で、あなたがどんな人でどのようにビジネスやリーダーシップに取り組むのか、私たちが理解する手がかりとなるような大事な瞬間に触れてください。たとえば、いじめや愛する人の死、大きな選択を間違えた時などの逆境にどう対処したかといったことです』

道義、そして信頼関係へ

私は今フリーランスをやっています。かつて予想・予定したものでもなければ、強く望んでなったものでもありません。ただそのような状況が突然訪れました。

だからこそ考えます。自分をどこへ向かわせるべきか。そのために今、身の振り方をどうできるか。

フリーランスだからと言って、適当なプロジェクトにスポットで参画してほどほどにこなして稼いでいくことができればよろしいとは考えませんし、『ALLIANCE』がいうところの信頼関係はこれからの時代確かに大事になっていくように感じました。


『ALLIANCE』の後半には人間関係や人脈としてのネットワークの重要性や、育て方、活かし方などについても述べられています。変わる情勢の中で何がコモディティ化し、何が重要になるかということ、そして何を大切にするべきかを、具体的な事例を添えてまとめたよい本だと思いました。

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福地春喜
フリーランスのソフトウェアエンジニア
情報資源管理としてのデータベース・コンテンツ設計に関心があります。数学や哲学、認知言語学など対象の捉え方に係る考え方に興味があります。システム開発の傍ら、それを推進するチームの体制やプロセス・仕組みづくりの支援もしています。 もっと詳しく